平成19年10月24日の夕方に、山梨市でチェンバロの工房をひらいている野神俊哉(のがみとしや)さんが、
病棟にチェンバロを運んで、チェンバロ作りのお話とチェンバロの音色を披露してくださいました。
野神さんは、チェンバロが作られた当時の製作方法を再現されているというお話で、
実際に使われている様々な天然素材を見せて下さいました。弦を弾く部分に使われている大きなコンドルの羽には、
みんなびっくりしました。硬い繊維が豚の毛と知った女の子が思わず手を引っ込める場面もありました。
それ以外にも、豚や牛の皮に触れたりにおいを嗅いだりしながら、昔の楽器作りの工夫に感心しました。
また、チェンバロに使われる木片の年輪から、実際の木の大きさを想像して、
何百年という時間の流れを感ずる事で自然の大切さも知りました。鉋(かんな)掛けの体験では、
削る感触と削られて出来る木くずに大騒ぎでした。チェンバロには金箔が施されていますが、野神さんは金箔も持ってきて下さいました。
ヒラヒラと思い通りにならない金箔を手際よく切り分ける野神さんに感心するとともに、いただいた金箔に大喜びしました。
さて、運んできて下さったチェンバロには、金箔とともに美しい花の絵が描かれていて、地上の星とも言うべき美しさです。
そして、お話の合間に野神さんが演奏して下さったチェンバロの響きは、天上の調べとでも言うべき澄んだ音色です。
音が少しでも多くの人に届くようにと、病棟の廊下での演奏でしたが、演奏して下さったヨーロッパの国々の曲は、
みな病棟にいることを忘れさせてくれるものでした。また、演奏していただいたバッハの曲の楽譜を、
野神さんの説明に従ってハサミで切りながらよくみると隠された魔法?が浮かび上がってきました。
そこで、耳を澄ませてもう一度演奏を聴かせていただくと、最初は難しく聞こえたバッハの曲が急に親しく感ぜられるから不思議です。
最後に、みんな交代でチェンバロの鍵盤に向かいました。大切な宝物に触れるようにおそるおそる手を伸ばす子や、
自分の知っている曲を弾いてみる子など、それぞれに鍵盤の感触と音色を楽しみました。
自然との関わりを大切にしてチェンバロ作りに取り組んでおられる野神さんのお話は、単なる演奏会では味わえない奥行きのあるもので、
夕食をはさんで約2時間の会でしたが、あっという間に過ぎてしまいました。
また、お手伝いしてくれた小児科病棟の学生ボランティア・サークルsunny smileの皆さんのおかげで、
みんなリラックスして積極的に楽しむことができました。チェンバロを身近に感ずるとともに、
物作りの楽しさを知ることができた会でした。
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