当科の犬飼らの論文
「Little impact of donor/recipient major mismatch for neutrophil-specific antigen NA2 on neutrophil recovery after allogeneic SCT. Inukai T, Goi K, Tezuka T, Uno K, Nemoto A, Takahashi K, Sato H, Akahane K, Hirose K, Honna H, Kuroda I, Kagami K, Nakamoto K, Taniguchi K, Nakazawa S, Sugita K」
が、骨髄移植の国際的な専門雑誌である「Bone Marrow Transplantation」の2 月号に掲載されました(Bone Marrow Transplant. 2009 Feb;43(3):229-35.)。

骨髄移植などの同種造血幹細胞移植では、移植してから造血が回復するまでの期 間は白血球数が著減するため感染のリスクが高くなります。移植が必要な患者さ んは、移植に先立って輸血を受けている場合が多く、輸血の際に混入した抗原型 が異なる好中球に対して抗体が出来る可能性があります。NA抗原は代表的な好中 球の抗原であり、妊娠中に母体で形成された抗NA抗体の移行によって新生児が好 中球減少症を発症することも知られています。従って、NA抗原型が異なる提供者 からの移植では、患者さんに既に存在する抗NA抗体の影響によって、移植後の好 中球数の回復が遅れる可能性が懸念されます。しかし、これまでNA抗原の適合性 が移植後の好中球回復に及ぼす影響は検討されていませんでした。 そこで当科で同種造血幹細胞移植を行った患者さんと提供者のNA抗原型と好中球 の回復状態を検討したところ、NA2抗原の不適合移植を受けた患者さんと、適合移 植を受けた患者さんの2群間で、移植後の好中球数の回復に明らかな差は認められ ませんでした。一方で、好中球の回復を促すG-CSFの投与や、臍帯血移植か骨髄移 植かの移植ソースの違いによって好中球数の回復に有意な差を認めたことから、NA2 抗原の適合性は、少なくともG-CSF使用や移植ソースの違いよりも移植後の好中球 数の回復に及ぼす影響は少ないことが明らかになりました。

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