当科の小林理香らの論文
「Expression of stanniocalcin-1 in gastrointestinal tracts of neonatal and mature rats. Kobayashi R, Nakagomi Y, Shimura Y, Mochizuki M, Kobayashi K, Sugita K, Ohyama K」が、 国際的な科学雑誌であるBiochemical and Biophysical Research Communicationsの 2009年11月号に掲載されました(Biochem Biophys Res Com 389: 478-483, 2009)。


スタニオカルシンは魚から発見されたカルシウム、リン代謝を調節するホルモンです。 ヒトでも魚類と類似のスタニオカルシン遺伝子が存在して247のアミノ酸からなることが確認されていますが、 ヒトでの役割はまだよくわかっていません。 哺乳動物の中で、マウスなどの齧歯類では、スタニオカルシンは主に腎と腸管においてリンの排泄、 吸収に関与しているだけでなく、妊娠中および授乳期には卵巣由来のスタニオカルシンの発現が増加して、 乳汁中にも分泌されることがわかっています。 興味深いことに、授乳期のマウスのスタニオカルシンを低下させると仔の体脂肪が減少することから、 脂質吸収にも重要であることが示唆されています。この研究では、成長期に相当する2週齢、 成長期後の9週齢、そして授乳期の分娩2週後のラットを用いて、 それぞれ消化管におけるスタニオカルシンの発現を検討しました。 その結果、スタニオカルシンは、各時期のラットの消化管に広範囲に発現しており、 特に栄養を必要とする成長期と授乳期にその発現は増加していることが初めて明らかになりました。 これらの知見は、スタニオカルシンがヒトにおいても脂肪吸収に関与する新しいホルモンである可能性も 示唆しており、未知の部分が多いヒトでのスタニオカルシンの役割について、端緒となると期待されます。

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