当科の沢登らの論文
A prolonged course of Group A streptococcus-associated nephritis: a mild case of dense deposit disease (DDD)? Sawanobori E, Umino A, Kanai H, Matsushita K, Iwasa S, Kitamura H, Oda T, Yoshizawa N, Sugita K, Higashida K.」が、 腎疾患の国際的な専門雑誌であるClinical Nephrology の2009年6月号に掲載されました(Clin Nephrol. 71: 703-7, 2009)


腎炎・症において、電子顕微鏡の病理像で認められる電子密度の高い沈着をDence depositeと言います。 このDence depositeは糸球体基底膜周囲やメサンギウムなどに認められますが、基底膜内に線状/リボン状に形成される特徴的な病理像をとるものは、 Dense Deposit Disease(膜性増殖性腎炎;MPGN type II)と呼ばれ、通常低補体血症を示し予後不良例も多く約半数が腎不全へ進行するとされています。 発症や進行の機序として、補体alternative 経路の調節不全が考えられていますが、まだ十分に解明されていません。 今回、急性に肉眼的血尿・タンパク尿・浮腫が出現して、最初の腎生検で溶連菌後急性糸球体腎炎が考えられたものの、 低補体血症が持続するために再度の腎生検を行ないDense Deposit Diseaseと診断した症例を経験し、ステロイドパルス療法によって臨床的に経過良好であったことを報告しました。 特筆すべきことに、本症例では先行感染として溶連菌感染を認め、腎組織においてもA群β溶連菌関連抗原であるnephritis-associated plasmin receptor protein (NAPlr) の存在が証明されたことから、 Dense Deposit Diseaseの発症に溶連菌が関与した可能性が示唆されました。 また、通常は溶連菌感染後急性糸球体腎炎ではNAPlrの沈着が30日以内に消失しますが、本症例では8週間以上の持続的な陽性を示しました。 したがって、本症例の病態においては、活性化したplasminがNAPlrに結合することによって補体のalternative経路が活性化され、補体の調節不全が引き起こされた可能性が考えられました。 これまでにDense Deposit Diseaseと溶連菌感染との関連性を証明した報告はなく、今回の知見はDense Deposit Diseaseの発症機序を解明する上で一助となると考えられます。

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