当科の金村らの論文
Prefrontal lobe growth in a patient with continuous spike-waves during slow sleep. Kanemura H, Sugita K, Aihara M.」が、 小児神経学の専門誌である「Neuropediatrics」の2009年8月号に掲載されました (Neuropediatrics 40: 192-194, 2009)


徐波睡眠時に持続性棘徐波を示すてんかん(epilepsy with continuous spike-waves during slow sleep; CSWS)は、その名の通りノン・レム睡眠時に全般性遅棘徐波結合(CS-W)と呼ばれる特有な脳波異常が持続的に認められて、知的退行や精神症状、行動異常を呈するまれなてんかん症候群です。
発作予後は悪くないものの発達予後は厳しく、50%で知的・行動面の問題を遺すとされています。
発作および脳波異常の持続期間によって後遺症の発生頻度・程度が異なることが推測されており、その病態として認知機能の主役である前頭前野の障害が想定されています。
この論文では、行動異常と知的退行を呈したCSWS患児において、3次元MRIを用いて前頭葉・前頭葉体積を測定し、健常児群と比較検討しました。
その結果、発作および脳波異常が続いている間には、前頭前野体積の増加がほとんど認められませんでした。
しかし、積極的な治療によって5ヵ月で発作および脳波異常が消失した後は、前頭前野の成長が徐々に回復して最終的に健常児群と相違ないレベルにまで到達しました。
現在、この患者には行動異常等を認めていません。
この知見から、CSWS患児の認知・行動障害に前頭前野の成長障害が関与していることと、発作および脳波異常の消失に要する期間がその後の前頭前野の機能に影響を及ぼすことが示されました。
したがって、CSWS患児に対しては積極的な治療で早期に発作および脳波異常をコントロールすることが、発達予後の改善に極めて重要であることが確認されました。

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