当科の矢ケ崎らの論文
Nocturnal blood glucose and IGFBP-1 changes in type 1 diabetes: Differences in the dawn phenomenon between insulin regimens. Yagasaki H, Kobayashi K, Saitou T, Nagamine K, Mitsui Y, Mochizuki M, Kobayashi K, Cho H, Ohyama K, Amemiya S, Nakazawa S.」が、 ドイツの内分泌・糖尿病学会の機関誌である「Experimental and clinical endocrinology & diabetes」の2010年3月号に掲載されました (Exp Clin Endocrinol Diabetes. 11:195-9, 2010)


暁現象(あかつきげんしょう;dawn phenomenon)は、おもにインスリン療法中の1型糖尿病患者で明け方に血糖値が急激に上昇する現象で、暁現象が起きると夜間の血糖変動が大きくなって血糖コントロールの悪化につながります。 原因として、投与されたインスリンの効果が切れてくることと、いわゆる体内時計の影響で成長ホルモンやコルチゾールなどのホルモンが活発に分泌されることによってインスリンに対する抵抗性が増すことが影響していると言われています。 また、1型糖尿病では早朝に肝臓のインスリン濃度が低下することでinsulin-like growth factor binding protein-1(インスリン様成長因子結合タンパク-1;IGFBP-1)の産生が亢進し、そのためにIGFBP-1に結合していないinsulin-like growth factor-1(インスリン様成長因子-1;IGF-I)が減少し、結果としてIGF-Iの持つインスリン様の血糖降下作用が減弱することが暁現象に関与していると報告されています。 そこで、インスリン確保の方法とIGFBP-1の暁現象への影響を48名の1型糖尿病患者で検討しました。 その結果、インスリン作用時間が比較的短い中間持続型インスリン療法群で夜間の血糖変動が最も大きく、暁現象の発生頻度は中間持続型インスリン療法群で62.1%であったの対して、インスリン作用時間が長い持効型インスリン療法群が16.6%でインスリンポンプ療法群では14.3%と有意に低いことがわかりました。 またIGFBP-1の産生が亢進する現象も、後者の投与法では抑えられていました。 以上の結果から、暁現象の予防には安定した夜間の基礎インスリンの確保が重要で、持効型インスリン療法やインスリンポンプ療法の導入が有効であると考えられました。

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