当科の赤羽らの論文
Specific induction of CD33 expression by E2A-HLF: the first evidence for aberrant myeloid antigen expression in ALL by a fusion transcription factor. Akahane K, Inukai T, Inaba T, Kurosawa H, Look AT, Kiyokawa N, Fujimoto J, Goto H, Endo M, Zhang X, Hirose K, Kuroda I, Honna H, Kagami K, Goi K, Nakazawa S, Sugita K.」が、 白血病の専門誌である「Leukemia」の2010年4月号に掲載されました (Leukemia. 24: 865-9, 2010)


白血病は小児の悪性腫瘍で最も多い疾患ですが、 このうち急性リンパ性白血病(ALL)はリンパ球のもとになる未分化な細胞が腫瘍化して発症します。 ところが、本来は顆粒球系への分化の過程で発現される様々な分子(骨髄球系抗原)が、 ALL症例の一部で発現されていることが1980年代から注目されてきましたが、その機序は不明のままでした。 骨髄球系抗原のなかでもCD33が発現されている小児ALL症例の治療成績が不良であることから、 CD33発現の機序を明らかにすることは治療成績の向上を目指すためにも重要な課題だとされてきました。 小児ALLでは、様々な種類の染色体転座(特定の部位で切断された染色体が、 別の染色体上の切断部位と再結合した状態)が認められ、染色体転座は白血病の発症に深く関与しています。 私達は、極めて予後が不良な17;19転座型ALLで高頻度にCD33が陽性であることに注目して、 17;19転座によって生ずる遺伝子産物のE2A-HLFがCD33発現に関与している可能性を検討しました。 その結果、CD33陰性のALL細胞にE2A-HLFを遺伝子導入するとCD33が陽性になることを確認しました。 E2A-HLFは様々な遺伝子の発現を誘導する転写因子として働きますが、 その働きに必須な部分に変異を導入したE2A-HLFではCD33発現が誘導されないことも確認しました。 さらに、17;19転座型ALLに発現されているCD33分子が細胞表面から細胞内部に情報を伝える機能を持つことと、 CD33分子に対する抗体に抗がん剤を結合させた薬剤ゲムツズマブオゾガマイシンが17;19転座型ALL細胞に殺細胞効果を示すことも確認しました。 これらの解析結果から、ALL細胞でのCD33発現に染色体転座の遺伝子産物が関与していることが初めて明らかになり、 長い間の謎とされてきたALL細胞で骨髄球系抗原が発現される機序を解明する糸口になると期待されます。

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