当科の合井らの論文
Successful tandem (autologous-cord blood) SCT in advanced neuroblastomas with highly amplified MYCN. Goi K, Inukai T, Honna H, Akahane K, Hirose K, Kuroda I, Hasuda N, Koshizuka K, Takano K, Sugita K.」が、 骨髄移植の専門誌である「Bone Marrow Transplant」の2011年6月号に掲載されました (Bone Marrow Transplant. 46,835-9, 2011.)


神経芽腫は小児の固形腫瘍で最も多い疾患で、近年は治療成績が向上してきています。 しかし、神経芽腫のうち腫瘍細胞でMYCN(以前はN-mycと呼ばれていました)遺伝子が増幅されている症例の治療成績は不良であり、その向上が重要な課題となっています。 予後不良な神経芽腫に対しては、大量の化学療法剤の投与を可能にする自家末梢血幹細胞移植療法が行われて、ある程度の効果が確認されています。 しかし、MYCN遺伝子に増幅がある神経芽腫症例では、自家末梢血幹細胞移植療法を行っても再発してしまう場合が依然として少なくありません。 このため、進行期の神経芽腫症例においても白血病と同じように同種造血幹細胞移植が試みられるようになってきました。 同種造血幹細胞移植では、移植されたリンパ球やナチュラルキラー(NK)細胞が患者さんの体内に残存する腫瘍細胞を免疫学的に攻撃することによる効果(移植片対腫瘍効果-GVT効果)が期待されますが、 このGVT効果が十分に発揮されるためには、残存する腫瘍細胞を移植前に可能な限り減らしておく必要があります。 そこで当科では、MYCN遺伝子が強く増幅され全身転移を伴って従来の治療では極めて予後が不良であると想定された進行期の神経芽腫の3症例に対して、 自家末梢血幹細胞移植療法による大量化学療法に引き続いて臍帯血を用いた連続移植療法を行いました。 3症例とも連続移植による重篤な急性の治療合併症はなく、移植後3から5年を経た時点で再発の兆候を認めていません。 したがって、極めて予後が厳しいと想定される進行期の神経芽腫症例において、本連続移植療法が有望な治療法である可能性が示唆されます。 こうしたことから、国内の他施設とも共同で本治療法の臨床研究が進行しているところです。

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