当科の犬飼らの論文
Clinical significance of early T-cell precursor acute lymphoblastic leukaemia: results of the Tokyo Children's Cancer Study Group Study L99-15. Inukai T, Kiyokawa N, Campana D, Coustan-Smith E, Kikuchi A, Kobayashi M, Takahashi H, Koh K, Manabe A, Kumagai M, Ikuta K, Hayashi Y, Tsuchida M, Sugita K, Ohara A.」が、 がイギリス血液学会の機関誌である「British Journal of Haematology」の2012年2月号に掲載されました (Br J Haematol. 2012 Feb;156(3):358-365.)


小児の急性リンパ性白血病は、T細胞型とB前駆細胞型に大別されます。 このうちT細胞型の占める割合は1割程度ですが、B前駆細胞型よりも治療成績が劣る傾向にあります。 小児のB前駆細胞型急性リンパ性白血病では、治療成績に関連する様々な臨床的特徴(予後因子)が明らかにされています。 これらの予後因子は、個々の患者さんの治療方針の決定に反映されて、治療成績の向上に貢献しています。 これに対して、T細胞型急性リンパ性白血病では、明確な予後因子が同定されていませんでした。 ところが最近、比較的未熟なEarly T-cell Precursor(ETP;早期T前駆細胞)としての性質を持つT細胞型急性リンパ性白血病(ETP-ALL)が、 化学療法に対する反応が悪く治療成績も極めて不良である可能性が欧米のグループから報告されました。 そこでETP-ALLの予後因子としての意義を検証するために、当科も所属している東京小児がん研究グループ(TCCSG)で行なわれた化学療法の治療成績を解析したのが、この研究です。 本研究では最初に日本の検査方法に合わせて試作したETP-ALLの診断基準が、既報の欧米症例においてETP-ALLを正確に診断出来ることを確認した上で、TCCSGにおけるETP-ALL症例を抽出しました。 その結果、ETP-ALL症例は化学療法に対する反応が不良で、早期に再発していることを明らかにしました。 その一方で、同種造血幹細胞移植がETP-ALLに有効である可能性も見出しています。 この研究から、ETP-ALLが日本人においても予後不良因子であることが明らかとなり、将来的には治療方針の決定に反映させていくことで、T細胞型急性リンパ性白血病の治療成績の向上につながると期待されます。

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