当科のらの論文
Oncogenic fusion E2A-HLF sensitizes t(17;19)-positive acute lymphoblastic leukemia to TRAIL-mediated apoptosis by upregulating the expression of death receptors.  Zhang X, Inukai T, Hirose K, Akahane K, Kuroda I, Honna-Oshiro H, Kagami K, Goi K, Nakamura K, Kobayashi M, Endo M, Yagita H, Kurosawa H, Thomas Look A, Honda H, Inaba T, Nakazawa S, Sugita K.」が、 白血病のトップ・ジャーナルである「Leukemia」の2012年12月号に掲載されました (Leukemia. 26:2483-93, 2012)


 17番と19番染色体の構造異常(転座)を持つ急性リンパ性白血病は非常に治りにくく、 従来の化学療法では全ての症例が1年半以内に再発して死亡しています。 一方、化学療法で根治が難しい白血病に対しては、 骨髄移植に代表されるような同種造血幹細胞移植療法が行われています。 同種造血幹細胞移植療法においては、移植されたリンパ球やナチュラルキラー細胞が、 患者さんの体内に残存する白血病細胞を免疫学的に攻撃(移植片対白血病効果と言います)することが、 白血病を根絶する原動力になっています。 この研究では、17番と19番染色体の転座によって生ずるE2A-HLFという異常遺伝子の働きが、 白血病細胞において免疫細胞による細胞傷害性に対する感受性を高めている可能性が明らかになりました。 具体的には、免疫細胞が持っている細胞傷害因子の1つであるTRAILに結合して細胞死を誘導する受容体 (DR4およびDR5)の白血病細胞における発現をE2A-HLFが高める作用を持つために、 17番と19番染色体の転座を持つ急性リンパ性白血病細胞では、TRAILによって細胞死が強く誘導されます。 こうした実験データは、化学療法では難治の17番と19番染色体の転座を持つ急性リンパ性白血病において、 同種造血幹細胞移植療法が有効である可能性を示唆します。 そこで、化学療法に引き続き早い時期に積極的に同種造血幹細胞移植療法を行ったところ、 この患者さんは移植療法から3年を経てなお再発なく生存しています。 この研究は、同種造血幹細胞移植療法による移植片対白血病効果において、 TRAILが中心的な役割を担っていることを明確に示すものであり、 白血病細胞のTRAILに対する感受性を高めることが、 白血病に対する同種造血幹細胞移植療法の成績向上のカギを握っていることがわかりました。

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