当科の矢ケ崎らの論文
Severe hypothalamopituitary dysfunction accompanied by influenza-associated encephalopathy: report of two pediatric cases.  Yagasaki H, Kobayashi K, Saito T, Goto Y, Komai T.」が臨床小児内分泌の専門誌である「J Pediatr Endocrinol Metab」の2013年1-2月号に掲載されました (J Pediatr Endocrinol Metab. 26:173-177, 2013.)


インフルエンザ脳症は、インフルエンザ感染症における合併症の中で最も重症で致死率が高いものです。発症早期には痙攣重積や意識障害のために集中治療が必要となり、長期的には深昏睡と自発呼吸消失のために人工呼吸器や経管栄養を含む全身管理が必要となることがあります。本論文はインフルエンザ脳症のなかでも最重症の小児患者において、視床下部下垂体の機能不全を認めたことから、ホルモンの補充療法を行った2症例の報告です。2症例ともに、副腎皮質ホルモンの不足が血圧の低下や低ナトリウム血症を、甲状腺ホルモンの不足が消化管通過障害を、抗利尿ホルモンの不足が尿崩症をそれぞれ起こす原因となっていました。その結果、血圧・尿量などのバイタルが非常に不安定となり、経管栄養や入浴などの日常的ケアにも支障を来していました。そこで、視床下部下垂体の機能障害に対して積極的にホルモンの補充療法を行ったところ、全身状態が安定して生活の質(quality of life)の改善が得られました。今回の2症例での経験は、最重症のインフルエンザ脳症における中・長期的ケアにおいて、意義ある知見であると考えられます。

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