当科の佐野らの論文
Depressive symptoms contribute to quality of life in children with epilepsy.  Sano F, Kanemura H, Tando T, Goto Y, Hosaka H, Sugita K, Aihara M.」欧州の小児神経学の専門誌である「Eur J Paediatr Neurol」の2014年11月号に掲載されました (Eur J Paediatr Neurol. 2014;18:774-977.)


「てんかん患者の治療において、発作を抑制することが重要なことはもちろんですが、日常生活の質(quality of life; QOL)を改善することも非常に大切です。成人のてんかん患者では、けいれんが起こること自体に加えて、その心理的な影響から健常成人に比べてQOLが低いことが知られています。さらに、QOLに影響する因子として、けいれんの頻度のみならず、抗てんかん薬の副作用や抑うつ・不安などの心理的要因も重要であることが指摘されています。一方、小児患者においては、発達途上であるために心理的にも不安定であり、てんかんによって自尊心や、社会とのかかわり、友人関係などに影響が強く出やすいとされています。したがって、小児のてんかん治療においては、QOLを評価することの重要性が高いにもかかわらず、てんかん児のQOLを検討した報告は少ないのが実情です。また、抑うつ・不安などの心理的要因のQOLに与える影響については、既報においてほとんど検討がなされていません。この論文において私たちは、小児てんかんにおいて、心理的な抑うつが強いほどQOLが低いことを明らかにしました。その一方で、年齢や性別、発作のコントロール、投与されている薬剤とその副作用、心理的な不安の有無はQOLへの影響が低いことがわかりました。以上から、小児てんかん患者の診療においては、単に発作をコントロールすることのみならず、特に心理的な抑うつ状態を評価して適切な対応を行う事がQOLの改善に重要と考えられます。

前のページへ戻る


研究業績へ戻る